財産分与の知識

財産分与とは?
夫婦が結婚生活のなかで協力して取得し維持した財産を離婚の際に双方で分け合うことを財産分与といいます。(注 離婚原因に関係なく分与される)財産分与は慰謝料と違い相手方の不法行為によって離婚を余儀なくされたかどうかなどの離婚に至った事情は、直接関係ありません。たとえば、不貞を行ったため財産分与請求が認められないといったことはありません。実質上、夫婦の共有財産があれば、財産分与は請求できます。


財産分与の種類
@清算的財産分与(通常の財産分与)
結婚生活で夫婦が協力して得た財産の清算。清算割合は財産形成の寄与度で決めるが、家事労働を評価し、専業主婦でも原則2分の1の寄与度を認める傾向にあります。(注 あくまでも原則2分の1はそのような傾向があるのみで判例は判断がわかれています。)
A扶養的財産分与(離婚後の扶養が目的)
離婚後の生活に経済的支障がある場合に、経済的な目処が立つまでの支援。清算的財産分与も慰謝料も請求できない場合もしくはできたとしてもそれだけでは生活できないとき(加算的に)に、これを補うために請求できます。
就職するまでの短期的な支援が目的であったり、離婚後扶養として支払われることが多いです(3年程度)。扶養的財産分与が認められる基準としては、自立の援助のほかに、高齢であること、病気であること、子供の監護をすることなどがあります。この子供の監護で認められる場合とは、子供を引きとり監護をすることで本人の経済的な自立が困難になるために、その配偶者に対して「扶養」が必要と判断されるからであり、これに対して子供の養育費はあくまでも子供のための給付金なので配偶者に対する扶養的財産分与とは別の問題です。なお、清算的財産分与では「夫婦財産」が対象となりますが、扶養的財産分与では、分与の義務を持つ配偶者に扶養能力があるかどうかが問題とされるため、夫婦財産がなくてもその配偶者が単独で持つ財産が分与の対象となることがあります。また、分与の義務があっても資産がなく、自分自身の生活が成り立たなくなる場合には扶養の額や期限を限定したり、扶養的財産分与を認めないこともあります。
その他

B慰謝料的財産分与(慰謝料を財産分与に含めた場合)

精神的苦痛に対する慰謝料。財産分与に慰謝料が含まれて、精神的な損害に対して充分に補填がされている場合には配偶者の不貞行為などの不法行為を問題として、別に慰謝料を請求することはできません。しかし慰謝料的財産分与を含めて財産が分与されても、精神的苦痛に対して充分に補填されたとはいえないと認められる場合には、別に慰謝料の請求をすることができます。財産分与と慰謝料は基本的には分けて考えるべきでしょう。一般的にも財産分与に慰謝料を含めず慰謝料は別に請求することが多いです。

C過去の婚姻費用の清算

婚姻費用(離婚までの生活費)の不払い分。離婚前に支払われなかったり、不足していたりする場合。

(離婚後でも請求は可能ですが、慰謝料的財産分与は3年、その他の財産分与は2年を離婚後、過ぎると請求できません)

財産分与の対象となる財産と対象とならない財産
夫婦が結婚生活のなかで協力して取得し維持した財産を離婚時に分け合うのが財産分与ですが、夫婦が婚姻中に協同で築いた財産といっても一緒に暮らしていた家屋から、テレビ、オーディオ、冷蔵庫、エアコンなどの家電製品、家具、車、果ては借金という負の財産まで、形態はさまざまです。ですので、どの財産が分与の対象になり、どの財産が対象にならないかは難しい問題です。結局はそれぞれについて夫婦の協力によって得られ、蓄えることができたものかどうかを11つ判断しなければいけません。

一般的にはこれらの財産は(1共有財産)、(2実質的共有財産)、(3特有財産)の三つに分類され12は分与の対象になり、3は除かれます。

1.共有財産
名実ともに夫婦の共有となっている財産です。夫婦で共同出資して、あるいはそれぞれ持分を決めて購入し、共有名義とされている不動産などがその典型です。家財や家具など、不動産のように登記の方法がなくても、婚姻中に夫婦で共同購入したものは、この共有財産にあたります。(独身時代<婚姻前>から夫婦それぞれが単独で所有していたものだけが除かれる)
例 (
a)共有名義の不動産 (b)タンス預金やへそくりなどの家庭内の現金(c)共有名義の住宅ローンや自動車のローン (d)結婚後に購入した家財道具(家具、電化製品など)(e)骨董品や美術品 (f)配偶者の協力によって得ることのできた高収入を望める地位や資格は無形の財産とみなし金銭に換算

2.実質的共有財産
夫婦の財産については民法で、夫婦の一方が「婚姻期間中自己の名で得た財産は、その特有財産とする」と規定されており夫婦別財産制をとっています。それに従えば夫または妻が得た収入は夫または妻固有の財産となりますが、それでは家事労働や内助の功などの協力が評価されないことになってしまいます。そこで、一方の財産であっても他方に潜在的な持分があると考え、たとえば妻が専業主婦でおもに夫の収入で夫名義の財産を築いてきた場合でも、妻の協力があったから財産を取得できたわけで実質的には共有の財産(実質的共有財産)であり妻は離婚の際にはこの実質的共有財産の清算を要求することができます。つまり、婚姻中に購入あるいは取得した財産で名義は夫婦のどちらかですが、実質的には夫婦共有の財産とみなされるものということです。
例 (
a)預貯金 (b)有価証券(株、国債など)および投資信託・ゴルフ会員権c)不動産 (d)自動車 (e)生命保険・個人年金 (f)子供の学資保険g)年金  (h)支給がすでに決まっているか、2・3年以内に支給される退職金および退職年金

3.特有財産
夫婦それぞれが、結婚する前から所有していた財産など、名実ともに単独所有の財産をいいます。また、婚姻中であっても、相続(夫婦の協力で築いた財産ではない)などの特殊な理由で取得した財産は、夫婦それぞれの固有財産とされることから、特有財産とされます。結婚をするときに持ってきた嫁入り道具、衣服、装身具(それぞれの専用品と考えられる財産)や、結婚前に蓄えた貯金、独身時代に使っていた電化製品などもこれにあたります。また、結婚前から所有していた不動産であれば、そのテナント料などの収益金も特有財産とされます。これらの特有財産は原則、財産分与の対象にはなりません。(注 本来は固有の財産とされる特有財産でも、配偶者がその財産の増加に貢献しているような場合には、分与の際にこの貢献度(寄与度)を考慮するというのが判例の発想です。この発想を踏まえて判断すると、最終的には夫婦の共同努力で形成された財産かどうかを、それぞれのケースごとに判断するということになります。)
例(
a)婚姻前に貯めた預貯金・有価証券など(名義が自分のもので明確に区別できる)(b)嫁入り道具、婚姻前に取得した家具c)婚姻後に親兄弟から贈与されたものや相続財産d)別居中に築いた財産(特有財産であっても、夫婦の協力で維持できた場合や扶養的財産分与となる場合などは、例外的に財産分与の対象となる場合があります。)


財産分与の対象となるかどうかでもめることが多い財産
@配偶者の経営する会社名義の財産

夫婦の片方が会社を経営しているとき、この配偶者と、経営する会社とは法人格も名義も異なります。そのため会社名義の財産は、基本的には財産分与の対象にはなりません。しかし、この会社が株式会社であったとき、配偶者が持つ会社の株は財産分与の対象となります。また、会社といっても、実質的に個人経営の会社の場合には、事実上配偶者の財産とみなされるので財産分与の対象となることがあります。

A退職金

現在、すでに支払われている退職金は基本的に分与の対象となります。夫婦の長年にわたる共同の努力によって得られたものという見方ができるからです。そのうえで、将来支払われる予定の退職金についてはどうか?といいますと「将来支払われる予定」とは、不確定な要素を含んでいるので分与の対象にするのはなかなか難しいですが、近く支払われることが確実な退職金については分与の対象とした判例がいくつかあります。いずれも支給時期まで
2,3年と間近に迫っていて、支払われる可能性が高いことと、夫婦の共同生活が長期間にわたっていて、実際の受取人である配偶者を長年支えてきた相手配偶者の寄与度が高いときに分与の対象とされているようです。それから、婚姻期間に相当する部分が財産の対象とされますので婚姻前から働いていた場合は全体の勤続期間のうちの婚姻期間が占める割合をもとに算定されます。また、将来的に支払われる退職金の場合、実際に分与が行われるのは、退職金が支払われた時点になることが多いようです。
B負債

借金は「負の財産」です。夫婦共同の債務とされるものは婚姻中に取得した不動産のローン、車のローンなどで、名義人がどちらかであっても分与の対象となり、財産分与の際に差し引かれることになります。しかし、そのほかの個人的な借金は財産分与の対象にはなりません。これは、離婚をしていなくても支払う必要はありません。(注 ただし、配偶者が借金する場合に連帯保証人になった場合は支払い義務が生じます。)つまり、配偶者が、消費者金融で知らないうちに借金をし、自分の遊興のために使っていたなどの場合は返済の義務はまったくないのです。
C夫以外の家族も従事している家業の財産

農業や漁業、自営業といったように、夫婦がどちらかの家族と一緒に従事している家業の場合、この家業で築かれた財産は通常この家族経営の代表者である父親名義の財産となっていることが多いと思います。あるいは、法人の形態を形式上はとっていて、法人名義の財産となっていることもあると思います。しかし、夫婦も一緒に働いてその財産形成に貢献したのですから、名義が異なっているために財産分与の対象とならず清算ができないのでは、離婚して家族を離れるほうにとっては不公平な結果となります。そこで、このような場合には家業で得た財産を家族全体の共有財産とし、そのうちの夫婦の共有財産を割り出して、その部分を財産分与の対象にします。

D資格

片方の配偶者が医師や弁護士など、特定の資格を必要とする職業を目指して勉強し、その間、相手配偶者が働いて家庭を支えていた場合、片方の配偶者は資格を得ることにより現在の職業に就けたのですから、この資格の取得により得られた片方の配偶者の収入を財産分与の対象とすることができます。

E保険金

婚姻中に生命保険の満期がきて保険金が支払われた場合には、受取人の名義がどちらのものであったとしても夫婦の共有財産として財産分与の対象とされます。この場合、満期まで支払われた保険料そのものが、夫婦の協力の結果といえるからです。しかし、生命保険料を支払っている間に離婚をした場合には、将来的に不確定な要素が多いため、この保険金を夫婦の共有財産とみなすのは難しいでしょう。とはいえ、実際は保険金を考慮しないわけにはいきませんので解約返戻金やその相当額を分配するのが妥当です。

F厚生年金、共済年金等の分割
2008年(平成20年)4月からの制度
20084以降に婚姻期間中に夫が厚生年金保険料として支払った保険料の部分に関しては当事者同士の協議や裁判所の決定を得ずに、離婚の際に社会保険事務所に届け出ることで2分の1を受け取ることが可能になります。(妻が第3号被保険者の場合=専業主婦など)
20084以前の厚生年金保険料納付部分に関しては当事者同士の協議、裁判所の決定が必要です。それから、当然のことながら婚姻以前の納付部分に関しては分割の対象にはなりません。なお、夫が公務員の場合などは、年金制度が会社員とは違いますが、同じように年金分割は可能になります。ただし、分割請求をする役所が社会保険事務所ではなく、国家公務員共済組合連合会などの別の場所になりますのでご注意ください。

年金分割の手続
裁判所の決定に関しては、年金の分割割合を記載してある書面(調停調書など)を裁判所で作成してもらえますが当事者同士の協議により分割割合を定めた場合には、自分たちで公証役場において、分割割合を公正証書に記載する必要があります(または、私署証書に公証人の認証をうける)。公証役場や裁判所など、公正証書等での分割割合を定めた書面の作成ができたら、社会保険事務所などに届出をします。


年金分割ができない場合

この年金分割制度は夫が会社員であり、厚生年金に加入していることが大前提です。つまり、会社員であっても、会社全体が厚生年金に加入していない場合や自営業者の妻は年金分割制度を利用できないということになります。ある程度余裕のある自営業者の方は、「国民年金基金」に加入していることもあるかと思いますが、この「国民年金基金」で受け取る年金についても、分割をして妻側が受け取ることはできません。自営業者の妻としては制度としてあるわけではありませんが、離婚をした夫から財産分与として一括金、定期金のような形で扶養を請求することで生活費を確保することになります。

財産の評価時期は?
最高裁判所は、裁判上の離婚で財産を評価する時期は、審理を終えたときとしています。これを、協議離婚の場合に当てはめて考えれば、離婚が成立したとき(離婚届を受理されたとき)が財産の評価基準時ということになります。しかし、分与する義務のある配偶者が、別居後に財産を減らしてしまった場合、その減少した財産を分与の対象とするのでは、分与を受けるほうの配偶者は困ってしまいます。また、別居して10年もたってからの離婚などという場合、その夫婦の協力関係は別居した時点で切れてしまっていることが多いでしょう。ですから、「夫婦財産の清算」にあたる財産分与(清算的財産分与)の場合には、その財産の評価時期は別居時までさかのぼり、別居当時の評価額が適用されます。このとき、別居後にそれぞれが取得した財産は分与の対象からはずされます。ただし、「扶養的財産分与」の場合には、分与をする配偶者の離婚後の財産状態の変化を考えて、どれだけの援助ができるのかを判断しなければなりませんから、この場合の財産の評価時期は離婚の成立時とするのが妥当だとされています。

*財産の評価時期

    清算的財産分与 → 別居時

    扶養的財産分与 → 離婚成立時

財産分与の割合

財産分与の割合については、法律の規定がないので財産形成についての夫婦双方の寄与度・貢献度によって、ケースバイケースで判断します。配偶者の法定相続分に準じて
2分の1を基本として考えそのうえで婚姻生活上の一切の事情を加味して貢献度を算定するのが最近の基本的な考え方といえます。
・夫婦共働きの場合(
2分の1ずつの分与例が多い)
判例は、実際に働いて得ていた収入に極端な差があるような場合、能力に著しい差がある場合、実働時間に極端な差がある場合以外には、収入の多少に関係なく配偶者双方の寄与度は原則として
2分の1としています。また、家事労働のために女性の実働時間が減って収入の減少を招いたようなケースでも、妻は家事労働を負担して家庭を維持してきたのですから結局は収入の多い少ないで差を設ける必要はなく、2分の1を妻の寄与度と認めています。さらに、夫婦それぞれが同等の働きをして収入を得ながら、妻だけが長年にわたって家事労働に従事してきたような場合の財産形成への寄与度を、妻が6、夫を4とした判例もあります。

・夫婦で家業に従事していた場合(2分の1ずつの分与例が多い)
基本的には共働きの夫婦と同様に、夫と妻の寄与度は平等であるとされます。これも妻が家事と育児を担当しながら、家業に尽くした点が評価されるからです。しかし、事業の運営が夫の手腕で拡大したなどの場合には、妻の寄与度は
2分の1以下となる場合もあります。

・専業主婦の場合
専業主婦の場合、妻は夫婦共同の財産を築くうえで金銭の出資というかたちで加わることは不可能です。しかし、妻が家事労働をして家庭を支えたため、夫の収入が確保できたのですから、この家事労働の財産形成への寄与度を判断します。判例はいくつかありますが、
50%の寄与度を認めたものでは、不動産などを購入したときに妻も現金を出していたり、妻の離婚後の生活に対して扶養的な要素を考慮したなど、特殊な要因が加味されたものが多く、そうでない場合には夫の事業への才覚、技術、手腕などが重視され、妻の寄与度が20%にとどまった例もありますし会社の仕事中心に生活する「仕事人間」の夫に尽くして健康を害した専業主婦の妻に40%の財産分与を認めたケースもあります。


財産分与の具体的な方法
財産分与の具体的な方法については、法律でこうしなければならないというルールを
決めているわけではないので、それぞれのケースごとに考慮して、もっとも適切な方法を考える必要があります。預貯金や現金は、分与割合さえ決まればそのまま分けられます。しかし、それ以外のものは、現金に換算して価値を評価する必要があります。もっとも値が張らない家財道具などはわざわざ査定しなくても、欲しいものを話し合いで単純に分けたほうが面倒でなく良いでしょう。ただし高価な家具がまじっていたり、一方がほとんど持っていったりする場合は現金分を減らすなどの調整をすると良いでしょう。株式や国債などの有価証券といった投資商品は売却してわけるか、時価評価して現物をわけるかの2つの方法があります。評価は購入時の価格ではなく、時価で行います。投資商品は高値のときも安値のときもありますから、時期によっては分配方法を考える必要があります。高値のときなら売却したお金をわけるのも良いですが、安値で短期的に上昇が見込めそうなら、現物でわけるほうが良いかも知れません。高価な美術品などは鑑定してもらえますので、売却しない場合は品物をもらう側が評価額を現金分から差し引くなどします。加入中の生命保険などは名義変更したり解約して返戻金を分割するなどで処理します。悩むところは住宅などの不動産です。売却してお金で分けるのがすっきりするのですが、どちらかが住み続ける場合には、譲渡するなどの手続きが必要です。不動産を分ける場合には、財産価値を評価しなければなりません。住宅ローンがなければ時価評価になります。購入価格ではないので注意してください。時価は不動産鑑定士の鑑定などで評価します。ローンが残っている住宅に関して財産分与対象額を算出するには時価評価してローン残高を差し引く方法と、評価時点までに返済した元金部分(利息部分を除く)を対象額とする方法があります。

・現金で分与する方法
現金は、もっとも簡明で便利な方法です。分割払いもできますし、特に財産分与の場合には、慰謝料などでは許されない定期金の方法もあります。定期金は「月額
10万円支払う」というように月々給付額は決まっていても、いつまで支払いを続けるのかという期限ははっきり決められていません。そのため支払い総額も決まっていないので多くは扶養的財産分与の場合に認められます。総額が決まっていないことで不払いが生じたときでも支払い義務のある配偶者に「残金○○ヵ月分を一括で支払いなさい」というペナルティーは科せません。なので、すでに支払われるべき金額しか、相手に請求できないというデメリットがあります。扶養的財産分与以外は、できるだけ短い年数の支払いにしたほうがいいのは慰謝料と同じです。預金や債券、証券など、現金に換えやすい財産が分与の対象になっているときには、一括で支払ってもらうようにしたほうが良いでしょう。

・現物で分与する方法
財産分与の対象財産が不動産の場合などでは、その財産価値を評価して、多くは分与相当額が現金で支払われます。この場合対象となる財産は現金ではありませんが給付の方法は現物給付ではなく現物給付のひとつの形態です。現物給付とは、不動産の所有権を全部相手に譲り渡す場合や共有持分を設定してそれに相当する部分を譲り渡す場合などの支払い方法をいいます。ただし、車や住居などに共有持分を設定した場合、実際にその財産を、たとえば
2分の1なりの分与相当分に分けることはできません。その場合は、財産価値を評価して、現金で清算することになり、結局は現金給付となります。
不動産以外で名義や所有権の変更手続きが必要になる財産分与
・車をもらうときの問題

財産分与で自家用車をもらう場合に重要な問題となるのはローンが残っているのか、いないのかということでしょう。ローンの大半が残っているのなら、財産としての価値はほとんどないので貰わないほうが良いでしょう。しかし、ローンの支払いがほとんど済んでいて残りのローンを引き継いで支払うことになっても、車をもらうメリットがあるという場合は別です。この場合通常ローンを支払い終わるまでは所有権は移さないという所有権留保によって、ローン支払い中の車の所有権はローン会社がもっています。そのため、夫婦の合意だけでは簡単に譲り渡すことはできません。このような場合はローン会社、夫婦の間で債務者の変更や譲渡に関する諸手続きが必要になります。どうしても車を譲り受けたいときには、離婚するときにこれらの確認と手続きをしっかりと済ませておきましょう。
・電話をもらうときの問題
電話加入権の名義は電話局に登録されています。なので電話をもらうときにはこの電話加入権の名義の書き換えが必要になります。その際、車と同様に変更前の名義人から譲り受けるほうへの書類の交付が必要です。ですから、こちらも離婚するときに手続きの確認等をしっかり行いましょう。離婚後は相手が動いてくれる保障はありません。

財産分与の実例

ケース1 (自宅不動産の単独所有を希望する夫)
妻から夫へ不動産の共有持分権移転手続き
同時に夫から妻へ
1600万円の金銭分与
(なお、夫が妻へ暴力等の原因で
400万円の慰謝料支払い)

ケース2 (双方が相手の不貞を疑い、不和から離婚訴訟へ)
共有財産形成の貢献度・寄与度は双方同程度であるとして、夫から妻に
3000万円の財産分与。慰謝料は、双方とも不貞の確たる証拠がないため棄却。

ケース3 (慰謝料請求は双方ないが、財産の分与をめぐっての争い)
共有持分すべてをそれぞれに分配し、差額を金銭分与で調整。
夫の退職金(6年後支給)の分与では、実質的な結婚期間(別居期間を除く)に対応する金額を算定。
   財産分与 夫の取得額 約
710万円
        妻の取得額 約
590万円

ケース4 (収入はそれぞれが管理する芸術家夫婦の離婚)   
生活形態から預貯金・著作権収入は名義人各自に属するため、財産分与の対象にならないとした。
不動産の
45%を分与の対象として、財産形成の寄与率を妻6、夫4として算定。妻から夫へ自宅不動産共有持分の所有権移転登記、夫から妻へ金銭分与約3000万円。

ケース5 (躁うつ病の夫が、妻の異性関係を疑い暴行)
妻からの離婚請求を認める。

妻が夫所有の土地をほとんど売却。自宅、店舗の建築費。子供の学費。生活費。に使ったとの妻の主張を認めず、土地・建物(母屋と店舗以外)は、夫の固有財産であり、清算的財産分与や慰謝料を加味する余地はないと判断。自宅、店舗は分与するが自宅の敷地には無償での使用貸借契約による使用借権、店舗の敷地には賃貸借契約による賃借権を設定。(夫が貸主、妻が借主)

ケース6 (別居時に妻が持ち出した財産は分与対象?) 
ローン弁済金の総額を財産分与の対象とするのではなく、支払利息を控除した元金充当分の合計を対象として算定。元金充当分
184万円の2分の1である92万円をそれぞれに財産分与。有体財産を(自動車、家財道具など)を共有財産と認め、それぞれが占有している物を評価した結果、妻が別居時に持ち出した分から16万円余りを夫に支払うよう命じられる。

ケース7 (店は法人だが、実質夫に営業所分権ありとの判断)
夫が営む法人組織の飲食店の営業財産は、結婚後に夫が個人営業で得た資金をもとに発足したもので、実質上の管理所分権は夫にあり、夫個人の営業と同一視できると判断、妻への財産分与
1000万円が相当。なお、夫から妻へ不貞行為の暴力による慰謝料200万円。

ケース8 (夫の資産不明、同居中の女性名義の不動産あり)
夫が別居後、同棲した女性(
23歳年下)名義の不動産は、仮に取得費用の一部を夫が出していても贈与と解され、実質的に夫の所有に属するとは認められない。とされ、夫からの扶養的財産分与を含めた財産分与額2200万円を妻へ。夫の不貞相手の女性から500万円の慰謝料。

ケース9 (精神疾患の妻。夫に扶養的財産分与として定期金の支払いを命じた。)
夫からの離婚を認め、妻の存命中、夫から毎月
2万円の定期金の支払いを命じる。

ケース10 (過去の婚姻費用の未払い金を考慮し妻への財産分与額を算定)
夫から妻へ自宅不動産の夫持分の所有権移転登記。妻は預金等
1291万円取得。夫婦財産の半額を超える1076万円を妻から夫に支払い。夫からの慰謝料は200万円。

ケース11 (協議離婚後、バンコク滞在の妻が財産分与を申し立て)
退職金などについて妻が寄与したのは同居期間だけと算定して財産分与。離婚についての話しが出ていない時点で妻に渡した750万円(すでに、自分が働いた分を加えて長女の学費や生活費、夫経営の会社の閉鎖費用、夫のタイ訪問時やカンボジ渡航時の費用として使ってしまった)は、財産分与の前渡しとして認めることはできず、分与額には影響しない。

ケース12 (年に半分以上船上生活の夫が暴力、夫から離婚請求)
夫が一級航海士であることを重視。専業主婦である妻の寄与度を
3割として、夫から財産分与額2300万円。離婚による慰謝料350万円のほか、別途暴力による慰謝料(後遺障害など)約1700万円を認めた。

ケース13 (会社人間の夫に尽くした専業主婦へ4割を分与)
自宅土地・建物については、購入時に妻が持参金として父より譲り受けた株券を処分し、それぞれ2分の1ずつ出し合って、共有名義で登記したことなどから夫婦が共同して形成した財産としては、夫の持分2分の12306万円)が財産分与の対象となる。そのうえで、夫の不動産持分全部を妻へ所有権移転手続きを行い、その他一括金として1694万円を支払うよう夫に命じた。さらに、扶養的財産分与として夫と妻の年金の差額の約4割(月額16万円)を妻の存命期間中払い続けることを夫に命じた。また、慰謝料として夫から妻へ200万円を支払うよう命じた。


財産分与の支払を確保するための手段
財産分与に限らず慰謝料等もできれば一括で支払われるほうが望ましいですが、相手に支払い能力がない場合は、分割払いにならざる得ません。その場合最低でも取り決めの書面を残しましょう。念書や離婚協議書などの私文書にした場合は、相手が払わないときはまずこれを証拠にして調停や裁判をおこし、支払い義務を認める調停調書や判決を得なければなりません。さらに、この調停調書や判決書に基づき相手の財産を差し押さえて、強制執行で取り立てることができます。しかし、これは非常に手間がかかりますので、公正証書(強制執行認諾文言入り)を作成しておけばすぐに、強制執行できます。給料を差し押さえて取り立てる場合、通常の債権は、支払い期限が過ぎている分につき、原則として手取り額の4分の1までしか、差し押さえできません。しかし、生活扶養的財産分与の場合は、将来の分についても2分の1まで差し押さえることが可能です。なお、調停や、審判で決まった義務が履行されないときは、家庭裁判所に履行勧告や履行命令を求める申し立てをすることもできます。

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