
養育費とは?
養育費とは、食費・教育費・医療費・保険料・娯楽費などを子供と一緒に生活していない親が支払うものです。したがって、母親が受け取ると決まっているわけではなく父親と子供が一緒に生活している場合は、母親が支払うことになります。しかし、勘違いしてはいけないところは、「子供を引き取る親の権利」ということではないことです。
要するに、養育費とは婚姻費用・慰謝料・財産分与などの他の離婚にからむお金の中でも明らかに違う性質を持っており、その性質とは子供のためのお金ということです。
そのことから、財産分与や慰謝料の放棄は夫婦2人の自由ですが養育費はまったく別問題として考えなければならないのです。つまり、養育費の本来の請求権は、子供が持っているということです。親同士で放棄の話を取り決めても子供の請求権は失われません。ただし、離婚時の合意内容は最優先されなければならないという趣旨から変更できるのは合意内容が子供に大きな不利益をもたらす場合などに限られるとの考え方を裁判所はとっているようです。
・養育費の対象となる費用
衣食住の経費 教育費 医療費 常識の範囲内での娯楽費 お小遣い 交通費(最近では教育費の比重が高まっており予備校の費用・塾の費用・受験料・学校の授業料など)
*注 認められなかったもの ピアノのレッスン代・日本舞踊月謝
・養育費の支払い期間
通常、支払い期間の目安は20歳まで、ですが18歳(高校卒業まで)もしくは父母が高学歴のため子が親と同レベルの生活をするために大学に行く必要がある場合は成年以後の授業料なども養育費として支払う場合もあります。
・養育費の時効は?(離婚時に養育費の取り決めをしていない場合)養育費の請求には時効というものがありませんから、過去にさかのぼって一方の親だけが負担していた養育費についてもう一方の親に分担してもらう請求をすることもできます。
・月ごとにもらうべきか?一括でもらうか?
基本的には一括払いではなく、月ごとの支払いにしておくべきでしょう。養育費は性質上あるまとまった金額を月払いで分割する「分割金」ではなく、一定の期間、一定の金額を支払い続けるという「定期金」といわれるものだからです。しかし、一括で支払ってもらうことにより不払いを防ぐことを考えると一括払いもやむを得ない場合もあるかと思います。その場合は、子供の将来のこともよく考え金額を決めるべきです。ただ、将来にわたってかかる費用である以上、当然、月日の経過により子供を取り巻く環境が変化してくることが考えられます。一括払いの取り決めをし、その金額をすでに受け取っていたとしても、その後、状況や事情が変わった場合には改めて養育費の請求ができるとされています。(事情変更の原則)
本来は非課税対象の養育費であっても、一括払いは贈与と見なされ、課税対象となる場合があります。ですから、名目は非課税の財産分与や慰謝料とすることもあります。しかし、このように名目を変えると法的には養育費の請求を放棄したことになり、離婚後の養育費の請求は出来なくなる恐れがあります。また、初回を頭金の形で、残りを分割払いとする時には分割方法を具体的に決めておきましょう。
・養育費の算定の仕方
裁判所が「判例タイムス第1111号」で掲載。「簡易迅速な養育費の算定を目指して」と題する論文を公表。
この論文の基本的な考え方は、養育費を支払う責任のある者の収入と、養育費を受け取る権利のある者の収入、さらに扶養する子供の数、年齢などによってその基準となる金額の指針を示した表を作成し、それによって金額の算定をしようというものです。さらに、その表で示された金額に対して、だいたい2万円前後の幅でこれを調整しようという主旨です。したがって、今までと違い、どのような費用がかかってきたかとか、どんな暮らしぶりかなどを考慮しないで、「それぞれの収入をしかるべき割合で分配する」ということだけを基準に判断されることになりました。
事情の変化によっては養育費の額の変更も可能か?
養育費が、子供を育てるために必要な費用であるならば、子供を取り巻く環境の変化によって、その額も変化すると思われます。子供が病気になったり、学費がかかる進学をしたり、あるいは親の収入が変わったりすれば子供にかかる費用が変わるのは当然でしょう。このように状況が変われば、養育費の額は変更されることもあるお金なのだという意味で、借金の分割返済のような総額の決まっている分割金の支払いとは、根本的にことなります。故に養育費は「定期金」と言えるのです。
離婚の際に双方で合意した養育費の額や支払いについては、きちんと尊重され、守られるべきですから養育費を変更して欲しいといっても、無制限に許されるものではありません。簡単に変更を認めたのでは、合意の拘束力はかえって弱まってしまいます。
裁判所もいったん養育費の額、支払期限についてお互いの合意が成立した以上、簡単にその変更を認めるべきではないとしています。そのうえで、合意の当時は予測することや、前提とすることもできなかった事情の変更がある場合には、合意を変更できるとしています。
原則、どちらかが再婚しても養育費の負担義務は消えません。
しかし、子どもを養育している側の再婚相手と子どもが養子縁組をしたり
、養育費を負担している側と再婚相手との間に子どもが出来たりという場合には、減額が認められます。
<養育費変更が考慮される事情変化>
| 増額 |
減額 |
進学による学費の増加
高校から大学へなど上位学校に進むときの増加や、公立ではなく私立に進学したとき
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進路変更による学費の減少 |
| 子供または養育している親の病気や怪我による医療費の大幅増加 |
養育費を負担している親の失業や転職による収入の減少
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| 養育している親の失業や転職による収入の減少 |
養育費を負担している親の病気や怪我による医療費の大幅増加 |
| インフレによる大幅な物価上昇 |
養育費を負担している親の再婚で、再婚相手と子供が養子縁組をした |
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養育している親の再就職などによる収入の増加 |
<養育費変更の手続き>
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双方が事情を説明
して話し合う
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家庭裁判所に調停を申し立てる
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審判による養育費の決定
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養育費の取り決め・支払いに問題が生じたら
養育費の条件などについて2人の合意ができないときは、家庭裁判所に調停を申し出ることができます。それでも合意が得られないときは、最終的には審判で決定されます。離婚前に養育費の取り決めをしていた場合には、過去の未払い分も後から請求することができます。もし、相手が話し合いに応じないときや合意が得られない場合でも「養育費を払わないのはけしからん」といって行動を起こすといっても、法治国家であるわが国では、何の根拠もなしに強制的に取り立てることは許されません。法の力で強制執行するためには、その前提として強制力のある約束が取り交わされていることが必要です。この約束を記載した文書を「債務名義」といいます。この債務名義には、当事者自らが公証人役場に出向いて作成してもらう「公正証書」強制執行認諾文言付き、調停で話し合われその合意によって決められた場合には、家庭裁判所が作成してくれる「調停調書」、また養育費をめぐる争いが裁判に進展したときには、家庭裁判所が作成してくれる「判決書」「和解調書」などがあります。
しかし、注意すべきは公正証書や調停調書などの債務名義を持っていても、それだけで自動的に強制執行をしてもらえるわけではありません。強制執行をしてもらうには、養育費の支払いを怠っている相手(債務者)の住所地を管轄する裁判所に対して差し押さえの申し立てをします。ただし、この手続きは支払いを受ける者が自分自身で、債務者の所有している財産を探しあて、差し押さえる手続きをしなければなりません。
もし、相手の勤務先や財産の状況がわからなくなったとしても地方裁判所に申し立てれば財産の情報を開示させることができます。(財産開示制度)(注 公正証書による強制執行の場合は財産開示制度を利用することはできません。
強制執行は、支払義務者の給与や退職金・預貯金口座・不動産・家財道具などを差し押さえて、養育費の支払いに充当する措置です。給与は2分の1まで差し押さえることができ、過去の未払い分だけでなく将来の分も差し押さえが可能です。給与の差し押さえができるので相手がサラリーマンの場合は確実な効果があります。自営業者の場合は、売掛金なども差し押さえの対象になります。株券、商品などは、よほど高価な宝石でもなければ代価としての差し押さえる価値は低く、あまり実効性はありません。また現金は、強制執行をしたときに、たまたまそこにまとまった現金が置いてあったという以外には、差し押さえることができませんから、期待はできません。ですから、相手の財産についてある程度、実効性のあるものにねらいをつけて強制執行をしなければ無駄になってしまいます。
| 差し押さえ財産
給与、賞与、退職金、預金口座、家財道具、車、不動産、自営業者の売掛金など。
・給与・退職金は手取りの2分の1まで
・将来分も差し押さえ可能。例えば支払い期間が20歳 までなら20歳までの分
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*財産が不明の場合、財産開示制度によって財産を開示させることができます。(しかし、あくまで義務者の任意の協力が必要)
*公正証書による場合は、財産開示制度は利用できません。
その他、裁判所に救済を求める方法
履行勧告
これは、家庭裁判所が支払い状況を調査し、相手に支払うように助言、指導、勧告などをすることです(手数料は無料)ただし、法的な拘束力がありませんので、相手が従わなければ支払わせることはできません。それでも、裁判所からの勧告などになじみのない一般の人にならば、心理的プレッシャーを与えることができます。
履行命令
履行勧告に従わない場合には、より強い措置である履行命令を行うことになります。
養育費の支払期限を家庭裁判所で設定し、相手に支払いを命令するものです。申し立てには300円の手数料が必要です。履行命令でも支払いそのものを強制する力はありません。しかし、従わなければ最高10万円の過料(制裁金)を支払うことになってしまいます。実際に相手にダメージを与える措置です。
離婚時に調停や審判・判決などであらかじめ養育費の取り決めをしていた場合には、再度の調停は必要ありません。申し立てにより、家庭裁判所から履行勧告や履行命令を相手方に出してもらうことができます。(実際は、履行命令についてはほとんど活用されていないようです)
公正証書作成・調停による話し合いや訴訟の提起
離婚時に養育費についての取り決め(訴訟、調停、審判、公正証書作成)をしていない場合は、履行命令・履行勧告・間接強制・強制執行などの手続きはもちろんできません。このようなときは、双方で協議するか調停による話し合いや訴訟を提起するところから始めなければなりません。まず、ひとつは内容証明により直接相手に協議の申し出を行います。その後、協議が整えば公証役場において公正証書を作成します。その後、不払いがあれば強制執行の手続きが取れます。
もうひとつとしては、調停で協議をして支払いの合意を成立させ、その内容を記載した調停調書を作成すれば、これは判決と同じ効力を持ちますので、強制執行や履行勧告あるいは履行命令ができます。調停で話がつかない場合は、審判や訴訟の提起をして、強制的に養育費についての決定や判決を得て、これに基づいて強制執行をする方法も考えられます。しかし、これらの方法は実行まで時間がかかるので最初の養育費の取り決めのときに、プライベートな文書や口約束だけで満足しないで、公正証書など、必ず強制力のある約束のかたちにしておくことが大切です。
養育費はいらないと約束してしまった場合
まず、重要なことは親子の関係と両親の関係を分けて考える、ということです。具体的には妻が離婚したい一心で「離婚さえしてくれれば、今後いっさい養育費の支払いは請求しない」と夫に約束してしまった場合、この合意の効力については、「子どもから親に対する請求権」という親子の関係と、「子供を養育監護している親から、養育監護していない親に対する請求」という親同士の関係とに分けて考えるということです。「子どもから親に対する請求権」から考えてみますと、未成熟のこどもは親に扶養される当然の権利があり、親は子どもを扶養する義務があります。子ども自身が持っている父親に対する扶養の請求権は、母親といえどもかってに処分することはできません。また、親同士の取り決めの中に、未成熟の子どもの意思が入っているとは考えられませんから、この請求権の放棄という約束は、子どもの権利からいうと無効ということになります。しかし、「子どもを養育監護している親から、養育監護していない親に対する請求」ということになると、母親はこの請求権を放棄してしまっているわけですから、あとになってこれまでにかかった過去の養育費の分担を父親に請求することは難しいです。ただ、子どもの請求権は母親と父親の取り決めがどうであろうと失われることはありませんから、将来的にかかるであろう養育費については、子どもから(未成熟の子どもでは母親が法定代理人となって)父親に請求するというかたちで求めることは可能です。要するに、過去の請求については「不可」、今後のかかるべき養育費についての請求は「可能」であると考えることができると思います。
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